凱歌のロッテ 歌集

創作ファンタジー「凱歌のロッテ」短編小説を公開中

【解説】休日、北部街道にて

・東世(とうぜ)とは

 

東の青の国、南の朱の国、西の白の国、北の黒の国で構成される広大な大陸世界であり、物語の舞台。歴史的な名残から四つの国に分かれてはいるものの、今は統治者もなく、国家としては成り立っていない。

寺院と学院が要の機関として機能しており、個人の手に負えない困りごとがある際はどちらかを頼る。海はあるが太陽と月がなく、昼と夜は神によって分けられる。

東世では、魂を持つものは必ず魔法を使うことができるとされている。目に見える神の存在があるため、独自の宗教観と文化を育んできた。白の国の最西部は桃源山脈と呼ばれ、険しい山々が連なっているが、それが彼らにとっての異世界と東世を隔てる壁の役割をしている。

 

 

・朋人(ゆうじん)/ お友達、知り合い、友達の友達、きょうだいの友達、友達の両親、両親の知り合い、と、知らない人でなければどんな人にでも使える言葉。「仲の良い朋人」と言うことはあるが「友達」に限定するような言葉はない。

 

・北部街道(ほくぶかいどう)/ 青の国の北部にある街道。理天区、紫錦区、藤京区をつなぐ。紫錦区と藤京区の境界で、青龍区へ伸びる南北街道と交わる。

 

・珠銭(じゅせん)/ お金としての価値がある小さい珠。様々な色があるが、価値の程度は変わらない。キャッシュレス社会であるため、珠銭は子どものお小遣いのような印象がある。

 

・紫錦黒海学院(しきんこくかいがくいん)/ 紫錦区の北西部にある比較的新しい学院。北部に点在する漁村の人々のために作られたが、近くに大きな街があり意外と都会的である。「黒海」や「黒海学院」と呼ばれることが多い。ちなみに「黒海」と呼ばれる海は存在しない。

 

・紫錦区(しきんく)/ 青の国の地名で、都がある青龍区の北東。北部にも南東部にも海がある。青の国の中心にあたるため交通網が発達している。昔から華やかな雰囲気の街が多い。

 

・藤京区(とうけいく)/ 青の国の東部。東世の東の果ての地でもある。地形的に孤立しているためやや独特な雰囲気の文化圏。青の国において、他国では青龍の都の次に有名な土地である。そのため地理的な問題をものともせず、藤京には都会的な街々が築かれた。古来から藤京の東には死者の国に通じる道があるとされている。

 

・理天区(りてんく)/ 青の国の西部。山や谷が多い地形で、稲作がおこなわれていない。青の国は都会的な街が多いのだが、ここだけはとんでもない田舎のまま、新たな畑以外は何も開発されていない。他国の人が青の国に牧歌的な田舎のイメージを抱く元凶だと他の街の人々が笑い話にするほどであるが、理想郷と呼ばれ愛される土地でもある。物語の要である理天学院は理天の西。

 

・黒の国(くろのくに)/ 東世の北部に位置する国。現在の東世の中心であり、朱の国との境付近にある玄武の都は主都と呼ばれ、現在は他の国からも多くの人々が訪れ賑わう大都市である。玄武区以外の土地では、古くから小麦作りが盛ん。

 

・玄武大学(げんぶだいがく)/ 現在の東世の主都にある大学であるため、黒の国以外の学生からも人気が高い。「進学に迷ったら玄武へ行け」という風潮がある。

 

・青龍区(せいりゅうく)/ 青の国の都、青龍を要する地。面積は大きくないが、青の国では珍しい平野地帯のため、古くから多くの人が集まり栄えてきた。

 

・杖 / 魔法の杖だが、体内から取り出すだけあって人骨によく似ている。杖がなくても魔法は使えるが、あった方が便利。代用品を使うこともあるが、どちらにせよ繊細な魔法を使う際には必需品。

 

・首から杖を / 東世では首の後ろに道具を収納したり、首の後ろから摩訶不思議なものを出したりする。魔法使いの核である魂は顔の内側にあると考えられ、魂に近い首まわりは強い魔力に溢れているイメージがあるらしい。首以外からも杖は出せるが、多くの人は首から出すことに慣れているので別の方法を使うことは稀である。

 

・シャンフォータン / 漢字をあてると「育快改」となる。東世の魔法使いの呪文はとても種類が少ない。「生活が便利でより良くなりますように」という願いを込めた魔法はすべてこの呪文を使用するため、毎日唱える機会がある。

 

・藤京西麓寺院(とうけいせいろくじいん)/ 「三角のお山」の麓にある寺院。街道沿いなので、サービスエリアのように様々な食べ物や飲み物を提供している。街道がこの寺院を貫いているのは、地形的にそれが作りやすそう・便利そうだったから。

 

・藤京学院(とうけいがくいん)/ 藤京で最も古い学院のためこのような名称だが、藤京は人口が多いので他にも学院はいくつもある。

 

・帰路(キロ)/ 十帰路は5キロメートル。東世の人は「行ったら帰ってくる」という考え方なので必ず往復の距離で数える。あまり使われないが片道の単位は「ゴーン」であり、5ゴーンは5キロメートルとなる。

 

・ムウ / 感嘆詞。学院では使用頻度が非常に高い。「よきかな」に近いニュアンスで、美味しいものを食べた時と人を褒めるときによく使う。挨拶の言葉「ムウムウ」が起源である。

 

・夏学生(かがくせい)春学生(しゅんがくせい)/ 基本的には五歳から六歳は春学程を、七歳から十五歳は夏学程を学ぶことになっているが、生まれた月や個人の能力、希望によってはその限りではない。春学生は長時間着席する練習程度のことしかしないが、夏学生は勉学だけでなく、生活に必要なことを幅広く学ぶ。年度始めという言葉はないが、一月始まりである。

 

・アヤ、アヤヤーなど / 感嘆詞。日本語と中国語で言う「あなや」「アイヤー」両方のニュアンスで使える。

 

・白虎の都(びゃっこのみやこ)/ 白の国の都で東世最大の港町。東世で唯一貿易をおこなっている。知的なイメージのある大都会。

 

・呪号(じゅごう)/ 呪文に分類されるが、かけ声に近い。青の国では農作業や網漁の際に大きな魔法を使うことが多かったため、呪号も大きな声で叫びやすいものへ変化していった。白の国の「ニエ」という呪号は、漢字をあてると「魄沈」となる。大きな声で発音しづらいため、玄武体術などには向かないとされる一方「集中しやすくて合理的」とも言われており「普段は自国の呪号だが、繊細な魔法を使うときはニエを使う」というニエユーザーも存在する。

 

・西世(せいぜ)/ サイゼではない。東世にとっては異世界だが、そうは言っても地理的に遠すぎるわけでもなく、ずいぶんと昔から交流があるらしい。少なくとも、東世の各大学には、西世をはじめとした異世界の人と話をすることができる道具がある。古来より白虎の都には西世の貨物船が着くため、白の国の人々は西世から様々な影響を受けてきた。

西世が東世と最も異なるのは、知狎に当たる存在の神がまったくべつの種族であること。東世の人々の魂は知狎が司るが、西世の人々の魂はそのべつの神々に管理されている。魂の所属は永遠に変わることがなく、それゆえに互いに交わることのない「異世界」という考えになった。

ちなみに西世の言葉で東世を指すときは「アルカディア」と呼ぶ。西世は「ユートピア」だという。東世からは遠いが、西世と陸続きの異世界「北世(ほくぜ)」と「南世(なんぜ)」もある。

 

・白虎大学(びゃっこだいがく)/ 東世にある四つの大学の中で最も卒業が難しいとされる難関大学。そのため他国から入学を希望する学生が多く、互いの知識や情報交換には最適の場。いわゆる教授、助教授のことは「老師」と呼ぶ。大学の教壇に立つことを目指して老師のもとで学ぶ助手などは「先生」と呼ばれ、区別される。

 

・ニン / 最もニュアンスの近い日本語は「えっへん!」であり、ムウと褒められたらニンと答える。どんな場面、どんな褒め言葉にもニンという一言の返答でよい。「えっへん」と同様「嬉しいことを言ってくれてありがとう」という意味は含まず「こんなに褒められる自分はなんて素晴らしいのだろう」の方が近い。

 

・朱の国(しゅのくに)/ 東世南部の広大な国。地形的に恵まれており、古来から他国に食糧などを分け与える役割を担うことが多々あった。かつては朱の国を中心に王や皇帝が立ったこともあるが、そのたびクーデターや革命も起きるので、現在は国家でなくなっている。稲作が特に盛んだが、小麦も作っている。

 

・雨の日/ 一般的に、雨具は帽子の形である。傘はファッション小物だと思われている。

 

・鹿祭り(しかまつり)/ 四月四日の大祭。由来は、この頃から鹿肉が美味しくなるため。

 

・知狎(ちこう)/ 東世の神々の総称であり、種族名でもある。上半身は人のようだが、下半身は鹿。そのため東世では鹿を神格化することがある。

毛並みの色と髪の色が同じで、体の大きさや風貌、話し方や態度など、人間と同じように個体差があるが、彼らの意思は必ず一致する。普段は知狎苑(ちこうえん)におり、僧尽の中から神僧(しんそう)という職につく人間を自ら選んで伝令役のように使う。知狎苑は各国に一箇所ずつ、東世に四つ存在し、いずれも人々の喧騒とはかけ離れた山合いにある。

東世は国家ではないため首都のようなものが存在しないが、最も神聖な場所としては黒の国の知狎苑・北苑(ほくえん)を挙げることができる。人々は北苑の知狎が中心核なのだろうと考えているが、実際は神のことなのでよくわからない。北苑を要する黒の国・玄武の都は「主都」と呼ばれ、多くの人が集まる。中心となる知狎苑が二千年ごとに変わるため、それに伴って主都も変わる。

 

・僧尽(そうじん)/ 寺院に所属して働く人の総称。神と人々とを繋ぐパイプ的な役割を果たし、困り事があればまずは寺院で相談する。

 

・おおよそ見当がつくのでは / このブログ内の小説を読んだだけでは絶対に見当がつかないので申し訳ない。未登場の本編の主人公にまつわること。

 

・青龍大学(せいりゅうだいがく)/ 老師にも学生にも青の国出身者が多く、地元志向が強い。

 

・トンネル / 瞬間移動ができる通路のようなもの。短い距離を移動するトンネルは自由に使えることが多いが、メンテナンス上の問題があり、田舎には数少ない。

 

・南北街道(なんぼくかいどう)/ 青の国の街道。藤京西麓寺院を始点とし、紫錦区の山道を下って青龍大学へ至る。

 

・星読み(ほしよみ)/ 新聞を読む感覚で「星を読む」と言う。満点の星空は東世のSNS的ツールで、それゆえ夜はだいたい天気が良い。星一つ一つが情報記事であり、人並みの魔力があれば自分の探している情報を瞬時に見つけて読むことができる。「詳しくはウェブで」のように「詳細は本日の南の空をご覧ください」と言う広告も存在する。魔力を使って読むため、視力は関係ない。星は毎日人が揚げているので、もちろん北極星や星座のようなものはない。星を使って何か公開したい人は星売りに相談する。

 

・遊びで作った花壇 / 西麓寺院の中に北部街道を通した理由に似ており、たくさん花を植えたかったので玄関の前も全部花壇にしてしまったのである。「跨げばいい」という考えはユッセの性格ではなく、東世的な感覚。ちょっと大変そう、不便そうに感じるが、彼らは魔法使いなので許容範囲がとても広く、おおらかで大胆な性質なのである。